■コロナの影響は不透明
世論調査関連ニュースサイト「538(ファイブサーティエイト)」は、この三つの問題に加え、新型コロナの感染拡大が、投票率にどう影響するのか見通しが立たない、と指摘する。現在、米国では第2波を抑えることに失敗し、多くの州で感染が3、4月よりも広がっている。この中には、中西部ウィスコンシン州など16年に僅差でトランプ氏が勝利した大激戦州も含まれる。投票日までにどれほどの激戦州で感染爆発が起きるのか不透明な状況だ。
米有権者は、「密」を嫌い投票に行かないのか。あるいは、「打倒トランプ」の民主党支持者が、「密」に警戒しながらも投票所に行くのか。
こうした状況に対し、ミシェル・オバマ前大統領夫人は、有権者に向けてビデオでこう呼びかけている。
「ランチを持って、場合によったらディナーも持って、投票所に行きましょう!」
両陣営は、異なる選挙戦を繰り広げている。トランプ氏はひたすら大規模な集会を開き、ほとんどマスクをしていない熱狂的な支持者が集まるのを楽しんでいるようにみえる。一方、バイデン氏は、マスクを着用した関係者や支持者と小さな集会を続けながら、支持率を伸ばしている。
山積する選挙前後の問題、市民の安全もかかる選挙結果と、前代未聞の状況の中、米有権者がどんな行動を取るのか。民主主義の礎(いしずえ)を守り続けることができるのか。あるいは、トランプ氏が選挙結果を拒否することで法廷闘争に持ち込み、民主的勝利ではなく、政治的勝利を得ることになるのか。米市民が、「ディストピア」状況でぶつかり合い、世界が見守る中、いよいよ大統領選挙の投開票日を迎える。(ジャーナリスト・津山恵子=ニューヨーク)
※AERA 2020年10月26日号より抜粋