「ある人が『コロナを感染させた』という事実関係を、客観的にどう判断するのでしょうか。すでに問題になっている『自粛警察』が再度活発化し、市民が互いを見張り合う活動がエスカレートする恐れもある。都民間の日常生活に分断をきたすことも考えられます。感染者の人権にも深くかかわる問題なので、慎重に話を進めていただきたい」

 こうした批判について、条例の発案者側はどのように受け止めるのか。伊藤都議は「我々の条例は誤解されやすいところもある」と断った上で、こう続ける。

「記者会見以降、出演した番組では『感染させたら罰金』といった不正確な字幕をつけられることもありました。コロナウイルスは無自覚の時に伝染させてしまうこともありうる。『感染させたら罰金』であれば、確かに人権侵害や都民の分断といった懸念も出るでしょう。しかし、我々の条例案は状況を限定している。正しく言うなら『自宅療養中に感染させたら罰金』なんです。自宅療養指示を受けたが出歩いたといった極端なケースを除けば、適用対象となる可能性は限りなく低いと思います」

 伊藤都議は「条例施行の目的は罰を科すことではなく、都民に自制をお願いすること。今回の条例が行動変容のきっかけになってほしい」とも強調した。条例案は12月の都議会定例会で議員提案が行われる予定。丁寧な説明が求められる。(本誌・松岡瑛理)

週刊朝日  2020年11月6日号

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