現在はポップコーンの発注量を調整することでロスを減らすよう努めているが、「食事NG」はいつまで続くかわからない。映画館に関係する飲食業界全体が大きなダメージを受けてしまうことを危惧している。
一方、映画館も厳しい経営判断を迫られている。
実際、9月のガイドライン改訂があったものの、シネコンで全席解禁を行ったのは一部だけ。109シネマズは劇場別に対応を分けており、大手シネコンであるイオンシネマは10月30日まで全席解禁を行わない旨を公表している。
映画館とすると、一見メリットが大きいように思える「全席解禁」だが、実情はそうでもない。前出の社長はこう話す。
「チケットが売れることのメリットは大きいですが、感染者が一人でも出てしまえば、休館を余儀なくされるリスクもあります。また、シネコンによってはチケット販売よりもポップコーンなどの飲食販売の方が利益率が高い。安易に手放すのは惜しいと考える会社もあるようです」
ガイドラインを制作した全興連によると、映画館の全席解禁のタイミングは「全興連は、映画館の座席の販売方法を統一することは出来ません。ガイドラインの範囲内で、各興行会社に任せる形となっています」と回答。窮地に立たされる飲食業者については「当方では事実が確認できず、コメントすることが出来ません。何卒ご了承ください」。これからのガイドライン改訂に向けた課題については「現時点では特にございません」と回答した。
前出の社長は、「徐々に緩和に向かってくれるとありがたいのは、シネコンも飲食業界も同じ思い」と話す。
『鬼滅の刃』大ヒットは、コロナ禍で苦しい映画業界にとって明るい話題となった。これを受けて西村経産相は10月20日、自身のTwitterにて「さらなる緩和も検討」と発言しているが、コロナ収束が見えないなか、様々な企業や団体が「興行と感染症対策の両立」という難しい課題に直面したままだ。歴史的パンデミックの余波は、いつまで続くのだろうか。(丸山彰良)
※週刊朝日オンライン限定記事