金銭的に苦しいことが理由の一つです。家賃や光熱費と、単身赴任生活では「二重負担」が重くのしかかります。長男は大学生で年100万円程度の授業料も。男性の収入だけでは家計は赤字。妻が働いて補っています。自宅に戻る費用は往復3万円程度で、ここを削らざるを得ないと言います。「そもそも、休みが取りづらい状況です」。男性は、さらに理由を説明します。役割分担をしてのチーム作業でシステムを運用しています。誰かが休むと、穴埋めは容易ではないそうです。
「単身赴任が長くなって危険であることは、私が不在の状況が長くなり、家族としての絆が揺らいでくることです。私が不在であることが日常となり、私がいることが非日常となります」。男性は、こう話します。たまに自宅に戻っても、長男との会話がはずみません。「バイトはどうだ?」「大学は?」。一緒に暮らしていれば聞かなくても済むようなことを一から聞かなくてはなりません。
妻への打ち解け方との差に、落胆することもあります。以前は家庭の様子を、メールや電話で聞いていましたが、パートから契約社員になった妻は、仕事と家庭との両立に疲れているのか、やりとりも途絶えがちです。
「家庭にいても、孤立感があります。妻と息子1人と、私の間に溝も感じます。私は家族に関心を持ち、つながりたいという気持ちがありますが、2人からはあまり感じません。釣り合いがとれていないのだと思います」
転勤の度、家族を伴うことを考えましたが、子どもが大きくなるにつれて生活基盤も強くなり、より難しいと思うようになりました。自宅近くでの転職は、収入減を危惧し踏み切れませんでした。「家族のため、生活のためと単身赴任生活を受け入れてきました。この結果の今のさみしさならば、何のために働いているのか、分からなくなります」。住宅ローンはあと20年程度残っています。男性の単身赴任生活は続きます。