また、大きな懸念は、このままでは感染を隠そうとする人が増えるのではないかということです。
一括りにされがちですが、「コロナに感染する」ことと「検査で陽性判定を受ける」ことは、本来別の話です。たとえ具合が悪くても、検査を受けなければ「陽性」とは判断されません。陽性が判明して初めて、公的な意味での「コロナ感染者」にカウントされる。
けれども、公表されるとバッシングを受けてしまう可能性がある場合、たとえ咳や熱が出ても解熱剤を飲んで我慢する人が増えてしまう。結果として、水面下で感染を拡大させるリスクが広がっていくと思っています。
──差別やバッシングが生まれるのはなぜでしょうか。
一つには、正しい知識・情報の不足があると思っています。例えば、すでにコロナから回復しているのに、仕事上の取引先から「コロナが怖いから来ないでくれ」と言われてしまったケースがあります。もし取引先に足を運べないのであれば、その方の社会復帰は難しくなってしまう。
台湾でコロナ感染者100名とその濃厚接触者2761人を対象とした調査が行われています。その結果によれば、新型コロナが他人にうつるのは本人のコロナ発症日の2日前から発症して5日目まで。6日目以降にうつされた人はいなかったそうです。日本でも同様の傾向が見られると、医師から話を聞きました。
また、回復者や退院者には抗体があり、3~4カ月は機能すると言われています。こうしたことから考えれば、回復した人が取引先から「仕事に来るな」というのは不合理な話。でも現実的には、多くの人が「怖いから」と何となく感染者を避けてしまっています。
──現在、「新型コロナウイルス感染症関連差別解消法」(仮称)を準備しているそうですね。どのような内容を考えておられますか。
社会全体で差別を止めるための、理念法を考えています。行政による相談支援体制の充実を図ることも狙いとしています。
主な対象は感染者本人とその家族ですが、医療関係者とその家族の人権を守る内容も盛り込む予定です。これまでに医療従事者の家族が会社で父親の仕事について話したところ、会社から「職場に来ないでくれ」と言われたケースなどについて報告を受けています。そのような取り扱いについても不合理な差別と考えています。