「コンビニ百里の道をゆく」は、51歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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食品ロスが問題になっています。ローソンでは、商品を発注する際にAIを活用し、過去のデータや類似条件の店舗データ、天候などを基に需要を予測。さらに近隣施設のイベントや商店街の催しなどその店に固有の情報を考慮して、店舗で最終的な発注数を決める「セミオート発注」を導入しています。
一方、販売期限が近づいた商品には値引きシールを貼り、売り切ることで廃棄を出さない取り組みもしています。ただ値引き額やタイミングなどは、現場の経験に頼るところが大きくなります。また、シールでは来店された方にしか値引きをお知らせすることができませんでした。
発注時だけではなく、販売時にもデジタルを活用できないかと考え、10月にKDDIさんと一緒に値引き情報を配信する実証実験を実施しました。
情報提供に同意いただいたお客様の過去1カ月分の位置情報と購買履歴をもとに、消費行動を分析します。そこからニーズをつかみ、弁当やデザートなどの値引き情報をお客様にスマホを通じてお知らせするという仕組みです。
スマホに届いた通知を見て来店される方もいて、非常に良い取り組みとのお声も頂いています。今後検討をすすめ、来年度には全店導入を目指しています。
将来的には天気予報なども組み合わせながら、値引きのタイミングや価格もAIで予測し、オーナーの皆さんをサポートできる仕組みを作りたいと考えています。新人スタッフからベテランまで、悩まずに判断ができて、ボタン一つで近隣のお客様に値引き情報を届けることができれば理想です。
今回のスマホの実験はオーナーの方との会話が発端となり、生まれたアイデアでした。運用を進めながら、現場の声をしっかり採り入れていきたいと考えています。
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長