――女性に、マッサージをさせたというのは?

「私が、されたんです。疲れたから肩です」

――女性は机に乗せられてたくし上げられたとか、胸を触られたり、吸われたりしたと言っています。

「それは多分、私に対する逆恨みだと思いますよ。多分、私に異性感情を持っていたみたい。断ったんですけれども、そこでお怒りになられて。十分に私も大変な目に遭っているし、やることは全部終えているので、これ以上触らないでいただきたい。追っかけて来ないでいただきたい。私の人権を侵害していますよ」

 提訴を受け、本誌では改めて男性に見解を聞くべく取材を申し込んだ。だが、3日午前中までに回答を得られなかった。

 また、本誌は、大学の第三者委員会が調査している段階で大学側に質問状を送ったところ、

「チャプレン相互のコミュニケーションを深めると同時にスピリチャルケアのマニュアルの見直し、行動指針の策定、誓約書提出の義務化など、対外的に疑義を持たれないための対応を強化しています」

「今後も引き続き、ガバナンス体制の強化に尽力していく所存です」

 との回答を得た。その具体策は、こうだった。

「チャプレン室のドアに透明のガラス窓を付け、外部から見えるようにするなど、インフラ面での改善策については対応済みです」

 今回の提訴について、改めて大学側に聞くと、

「訴状が届いてないので、お答えは差し控えさせていただきます」

 とのコメントが出た。該当の男性については、

「もう在籍しておりません」

 という。だが、病院を離れた時期や理由は明かさなかった。ホームページを見ると、当初4人いた牧師が3人になっていた。

 被害があったという日から3年半。女性はこう話す。

「私の場合、被害を受け、聖路加病院に相談しても、顧問弁護士に相談したらなどと、ろくに対応してもらえなかった。別の相談窓口に電話してもたらいまわし。チャプレンとの問題はいろんな教会や関係機関などが抱えていると思います。聖職者による性暴力に声を上げられるのは一部。私のケースを例として、教会や医療機関などにも、セクハラや性被害が生じた時の救済の相談のシステムをつくって欲しいと思います」

(本誌・上田耕司、岩下明日香)

※週刊朝日オンライン限定記事

著者プロフィールを見る
上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

上田耕司の記事一覧はこちら