50年に及ぶ格闘人生を終え、ようやく手にした「何もしない毎日」に喜んでいたのも束の間、突然患った大病を乗り越えてカムバックした天龍源一郎さん。2月2日に迎えた70歳という節目の年に、いま天龍さんが伝えたいことは? 今回は「ダンディズム」をテーマに、飄々と明るくつれづれに語ります。
* * *
俺が思うダンディズムっていうのは、飄々としていて自分の好きなことやって自分で満足している人っていう感じかな。ひとつのことだけじゃなくて、いろいろなことができたり、チャレンジしている人はカッコいいなって思うよ。
プロレスラーだと藤原喜明。彼はプロレスだけでなく、ドラマや映画にも出演して、イラスト、盆栽、陶芸もやったりと才能豊か。好きなことをあれこれやって、飄々と生きているのがカッコいい。尊敬すべき人物だ。
楽ちゃん(6代目三遊亭円楽)も多趣味でいろいろなことが上手だね。俺も楽ちゃんからゴルフをすすめられたんだけど、あまりハマらなかった。ゴルフ場に行くと「景色がきれいでいいな~」と思うんだけど、3~4ホールもやると面倒くさくなって「もう帰ろうよ」と言ってしまう。一瞬の立ち合いで勝負が決まる相撲で育ったもんだから、短期勝負が好きなんだよね。俺の趣味の競馬も短期勝負だろう? 自分でじっくり何かを育てて熟成させるということにあまりピンとこなくてね……。長く続いたのは「相撲、プロレス、女房」だけだ(笑)。おっと、これを読んで「なにをぬけぬけと!」と、カチンときているおネエちゃんがいるかもしれないな……。
さて、話を戻して(笑)、ほかに俺がダンディーだと思うプロレスラーは、ミル・マスカラスだ。彼はいつもビシっとした格好で来日していた。試合用のマスクも、日本で20試合あるとすると20枚のマスクを用意していて、いつも大きなトランクを2つ抱えて来日していたことをよく覚えている。大体のレスラーは地方の試合となるとジャージ、スニーカー姿で移動したりするけど、マスカラスはいつでもどこでもジャケットを着ていたしね。それだけマスクや服をいっぱい持ってきていたんだろう。そんなマスカラスの姿を見てファンになった人も多いと思うよ。