また、彼はミル・マスカラスという名前にプライドを持っていた。彼よりもからだの大きいブルーザー・ブロディやスタン・ハンセンと対戦すると、得意技のフライング・ボディプレスを跳ね返されたりする。そうすると彼はムキになってがむしゃらな攻撃をするんだよ。クリーンでオーソドックスなスタイルのマスカラスだけど、ブロディやハンセンに対して「お前らは最近人気かもしれないが、俺は日本プロレス時代からのスターなんだ。お前らポッと出のレスラーとは格が違うんだ」という意地があったんだと思うよ。メキシコ人は格を重んじるし、彼は母国でもスーパースター。その立ち振る舞いはさすが“仮面貴族”だったね。

 俳優でダンディだと思うのは、ロバート・デ・ニーロだ。彼は渋くて、我が道を行く俳優だけど、出る映画はほとんどが主演級にラインナップされているよね。若いころから「変わった演じどころする人だな」って思っていて、ずっと好きな役者だね。影があるけど自分の意識を貫く芯の強い役がよく似合うね。なかなか出せない味を持っていると思うよ。

 そして日本の俳優では、なんといっても松方弘樹さん。休みになると漁船を出して乗ってマグロを釣りに行ったりと趣味も男前で豪放だ。梅宮辰夫さんも亡くなって、こんな豪快な趣味を持っているスターは、もう出てこないよね。松方さんは若いときから主役になって有名だったけど、俳優のお父さん(近衛十四郎)の影響もあって、共演した役者さんやスタッフをとても大切にして、もてなしていたということをよく聞く。そういう面でもダンディだ。

 最近はそういう人がいなくなってさびしいよね。そういうことは無理してやれっていうんじゃないけど、上に立つ人の義務でもあると思うんだ。下の者を育てるというか「上になればこうなれるぞ」という姿を見せつけることも教えなんだよ。今はそれがなくなって、ちまちま自分ばかりいい車乗って、自分だけいい店で遊んでっていう輩も多いだろう。

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天龍源一郎、任侠映画のイメージの「松方弘樹」にビビる!?