北野武さんがAERAに登場。北野さんは本質をつく言葉で、いつの時代も人々の心を揺さぶって来た。昨年末から立て続けに小説を刊行し、芸人、映画監督、小説家としても才能を発揮し続けている。AERA 2020年11月16日号から。
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「今年はずっと入院してるみたい」
10月17日の「新・情報7daysニュースキャスター」で、北野がぽそりとそう言った。その真意が気になった。
「コロナの影響でライブができないってのがイヤだね。テレビも最近は規制ばっかりだから、自分の好きなことができるネット配信の番組を作ろうと思って、いまやってるとこ。もうめちゃくちゃ言ってやろうかと思って(笑)。ライブだったら好きなこと言えるのに、今はそれができないでしょ。だから、調子が出なくて、ずっと入院してるみたいなんだ」
2014年、北野は自身初の単独ライブを渋谷で開催した。今年に入って新型コロナの感染が拡大するまで、仙台、名古屋、福岡と全国を精力的に回っていた。
「客前ってのは、やっぱり芸人の基本だね。緊迫感というか、同じ空気を吸って場を共有してるってのがとても重要で。テレビだと周りのスタッフは笑ってるけど、視聴者がどんな顔してんのかわかんないじゃない」
舞台の上からなら、たとえ2千人が笑っていても、笑っていない1人の客にすぐ気が付く。すると、芸人魂が燃えあがるという。
「ライブのいいところは、失敗があるところ。気づくことがたくさんあるでしょ。いまのコンテンツって、安全が保証されてるというか、結果がわかってる野球中継を見せられているような気分。要は水戸黄門なんだよね。まあ、それを求めてる視聴者も多いんだけど、でもたまには印籠を出したあと斬られたほうが面白いじゃねえかって(笑)。その点、ライブは未知で、やじってくるやつもいるし。それがいいんだよな」
(ライター・澤田憲)
※AERA 2020年11月16日号