あなたの周りにムダにやる気を下げてくる人物はいないだろうか? 経営・組織戦略コンサルタントの西野一輝氏は、こうした人物への対策を『モチベーション下げマンとの戦い方』(朝日新聞出版)として上梓した。本書から一部を抜粋・再構成して紹介する。今回は「休むことを咎められた場合の対処法に」について。
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働き方改革が進むなかでも、「全然残業しませんよね」と言ったり、嫌みたらしく「有休取るんだ」と指摘したりして、モチベーションを下げる人がいます。こうした発言は、時代の流れでなかなか少なくなってきていますが、それでも比較的労働時間が長く、休みが取りづらい部門で、自分だけが過剰な労働を強いられていると感じる人が発言してしまいがちです。
取材したあるメーカーは、残業禁止や有休取得を促進しすぎてしまい、クリスマスに出勤する人が皆無となり、店舗業務に大きな支障をきたす状態になりました。そこで、休む理由が低い人に出勤を推奨することになり、独身社員がその対象となりました。当然ながら独身社員から不満が出て「子供がいる女性も出勤・残業をすべきでしょう」という発言が社内で出て、大きな問題になったとのことです。
このように全員が平等に仕事をふられるわけではなく、結局誰かが損な役回りになることがあります。仕事をふられた人は「自分ばかり働いている」ということを主張したくて不満が漏れ出てくるのです。自分が不公平な状態にあるということを伝えたいのです。
「自分は損をしている」と思っていることは、裏を返せば、「自分以外の周りは得をしている」と思っているということです。周りの人は、ある意味でジェラシーの対象になっていることを踏まえなければなりません。言い方を間違えると相手を敵に回す可能性がありますので、当然、相手の反感を買うような発言は慎むべきです。
「全然残業しないんですね」という質問に対して、さすがに「なぜ残業しないのかというと、理由が三つあります」などと語るのは難しいものがあります。「全然残業しない」と言われたら「残業しますよ。必要なときはちゃんとやります」 というふうに言ったほうがいいですし、「有休取るんだ」と言われたときも、「必要なときは取ります」というように端的に言えばいいでしょう。
あくまで自分は一般的な仕事のスタイルをしており、周囲と大きな違いはないことを示すのです。「質問した相手と同じ立場である」と思える回答をしましょう。
クリスマスの出勤はしないかもしれない。家族の関係で早めに帰ることがあるのは事実。しかし、残業しないわけではない。むやみに有休を取ることはないから、あなたと大きく違いはありませんよ、ということをやんわりと伝えるのです。
「自分は損をしている」と思っている人の発言でモチベーションを下げる必要はありません。相手に問題発言と捉えられないように、多少のケアを含めた適切な発言を心がけましょう。
■西野一輝(にしの・かずき)/経営・組織戦略コンサルタント。大学卒業後、大手出版社に入社。ビジネス関連の編集・企画に関わる。現在は独立して事務所を設立。経営者、専門家など2000名以上に取材を行ってきた経験を生かして、人材育成や組織開発の支援を行っている。