
作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が、AERAでの連載をまとめた書籍「池田大作研究 世界宗教への道を追う」を上梓した。連載の中で宗教としての創価学会を見つめ続けた佐藤氏は、創価学会はまだ変化の途中にあると指摘する。AERA 2020年11月16日号で、佐藤氏と作家の澤田瞳子氏が語り合った。
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澤田:今の創価学会は、キリスト教の長い歴史で見ると、だいたいいつごろに当たりますか。
佐藤:ミラノ勅令(313年)ぐらいですね。
澤田:なるほど。じゃあまだまだこれから先があるわけですね。
佐藤:ミラノ勅令で、公認されたということによって徐々にシステムの側になっていくというところだけれども、まだ帝国の中で完全な認知は得られてないっていう、こういうところじゃないかと思うんです。
澤田:今からがさらに面白いですね。
佐藤:いろんな変化があると思いますよ。特に現実政治のことを考えた場合に、影響は大きい。例えば安倍政権のスタートのときと終わりの時で、実は変わってるところがあるんですよね。核廃絶に対する姿勢です。安倍さんは、ローマ教皇が来たときに、核廃絶を強調する演説をした。核廃絶に対する情熱がこの7年8カ月で変わりましたね。明らかに、公明党の影響があると思います。ナショナリズムが強まり、戦争の危機が強まってくる中において、戦争を阻止するという役割を、私は、創価学会に非常に期待しているんですよ。
裏返していうと、キリスト教は現実の中に自分たちの信仰を生かしていくというところが弱いんですよね。だから、私なんかも微力なところで、教育とか私の評論、あるいは創価学会を扱うということの背景の意図も含め、平和を維持したい、戦争を避けたいと、こういう思いがあるわけですよね。
他方、ロシアみたいな国をソ連時代から担当して、核抑止の論理は論理で、外交官としてわかるから、常に私の中に引き裂かれるような感じがあるんです。自分の理念と現実の間で。
それと同じで、池田大作氏のテキストにも、理念と現実の間で、引き裂かれるような状況をやっぱり感じるわけですね。その中で自分の言葉を紡いでいって、自分の宗教団体を主導していく。やっぱり、宗教って面白いなと思うわけですよね。