そして10月、この「こより綴じ」と呼ばれる作業は、他の閣議に関連する業務とともに、河野氏の行革によってたちまち、「非効率」の烙印を押されることとなった。

「これら作業は、10年以上前から見直しが提言されてきました。河野さんのトップダウンは素晴らしいですが、官僚側でも幹部が本気で取り組んでいれば、もっと早く変えることができたはずです。これこそ、ボトムアップではうまくいかない官僚組織の悪い側面だと感じました。今回改善された閣議に関する事務作業に関しては、官房長官が決定権を持っています。当時の官房長官だった菅さんまで届いていなかったか、どこかで黙殺されてしまったのか。当然、政府には対応すべき喫緊の課題が山積していますから、政権の優先度は低かったのだとは思いますが、ちりも積もれば官僚の大きな負担になり、他の業務の遅延や業務逼迫によるミスにもつながる恐れがあります。国民生活を考えた際にも、霞が関のあしき慣例の改善は求められるものです」

 書類の形式を変えるだけで官房長官の判断を仰ぐ必要があることにも驚きだが、あしき慣習は他にも数多くあるという。おもち氏は「霞が関におけるあしき慣例と、永田町との関係は切っても切り離せません」と話す。政治家の中には「公務」と「政治活動」を混同し、雑用も振ってくることがあるという。

「地元の支持団体の会合やイベントでの挨拶文の作成、マスコミからのアンケートへの回答文作成、陳情への回答文や、『テレビの討論番組で何と答えていいのか考えてほしい』という依頼もありました。政治活動のスピーチ原稿を作るのは、本来は政治家と秘書の仕事です。知人の官僚の中には、国会議員に頼まれて地元支援者の子どもの夏休みの宿題(自由研究のレポート)などを手伝わされた人もいました。これは中央省庁の官僚に発注するようなことでしょうか。ご本人の政治活動として、政策秘書などに依頼するべき案件なのに、官僚を使いたがる議員がいる。『無料で使えるシンクタンク』のような扱いです。公務と政治活動は分けて考えるべきだという当たり前のことも、中にいると忙殺されるので、疑問に思うことはありませんでした。組織の外に出てみて、ようやくおかしいということに気が付きました」

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最も被害を受けているのは若手官僚