北朝鮮がまたも核実験を強行した。昨年12月に米本土に到達可能な事実上の長距離弾道ミサイル発射が成功して2カ月後、この2月12日に強行した3度目の核実験。

 核ミサイルの脅威を米オバマ政権に見せつけ、核保有国と認めさせたい北朝鮮は、ミサイル搭載可能な核弾頭の小型化・軽量化を急ぐ。標的は米国だけではない。

「金正日はこう言った。いったん戦争が起きたら南朝鮮(韓国)だけでなく、日本も人が住もうにも住めない廃墟にしてしまわなければならない、と」

 9日、北朝鮮強制収容所問題を追及する市民団体が都内で開いた集会に招かれ証言したのは李英秀(イ・ヨンス)氏(仮名、40代)。朝鮮戦争で捕虜にされ北に連行された韓国軍捕虜の息子として北朝鮮に生まれ、07年に脱北、いまは韓国に住む。

 李氏は90年代半ばから脱北までの10年余り、北の工作機関の資材調達部署で働いた。98年6月ごろ、慰労の意味で仲間たちと十数日間の平壌観光が許された。最後に工作機関や招待所の集まる地区で、幹部用の記録映画を見せられた。映画の最後、工作員を育成する金正日政治軍事大学の卒業式映像が出た。軍の大物で金正日総書記の長年の側近、呉克烈(オ・グンニョル)・作戦部長が卒業生らの前で、金総書記にこう報告した。

「将軍さま、軍の世話にならなくても、この工作機関の力だけで十分、祖国統一を果たすことができます」

 金総書記が満足げな様子で言い放ったのが、「日本も廃墟に──」の発言だった。北のテレビで一般国民向けに流される記録映画に金総書記の肉声が出ることはまずないが、幹部対象の映画は別だ。

「我々の作る核兵器は、広島、長崎に落とされた原爆の数十倍、数百倍の威力を持つものにしなければならない」

 軍や工作機関に、こんな金総書記の「お言葉」が文書となって下りてくることもよくあったという。

AERA 2013年2月25日号