放任主義から過保護まで親のしつけ方針は様々。体罰についても、親によって許容度がかなり違い、価値観がぶつかり合う「ママ友摩擦」を引き起こすことも。
神奈川県内の公立小学校の女性教師(37)は、2年生の担任をしていたとき、こんな経験をした。
ある男の子が遊びながら、友達の顔をたたいた。病院に行くほどのケガではなかったが、青あざが残った。女性教師は男の子に対して叱った。
「自分がされて嫌だと思うことを友達にしちゃダメでしょ」
すると、男の子は反論。
「僕はいつもたたかれているから、嫌じゃないもん」
この男の子の家庭では、親がしつけとして子どもをたたくのは日常茶飯事で、男の子は友達をたたくことも特別なことではないと感じていたようだ。
ケンカについては、それぞれの家庭に電話で報告した。たたいた男の子の母親は、男の子同士のケンカは当然という反応だった。
だが、一方のたたかれた男の子の親は、「常識」が全く違った。どちらかと言えば、教育熱心で子どもを大事にかわいがるタイプで、たたいてしつけるなんてもってのほかという考え方。この母親は、学年じゅうに広がる幼稚園時代のママ友ネットワークに、たたいた男の子について「乱暴だから付き合わないほうがいい」とメールを流した。学校に対しても、今後のクラス編成で一緒にしないよう申し入れてきた。女性教師は言う。
「子どもはケンカをしてもすぐに仲直りをする。それよりよほど大変なのは、子育てに対して全く異なる考え方をしている親の関係性を修復することです」
子どもたちの中には、親同士の価値観が合わないことを感じ取り、友達でも親の前では付き合わないようにしている例もある。この教師は親の事情が子どもの関係性にまで影響を及ぼすのは大問題だと感じるが、親の価値観が多様化しているため、口出しはできないという。
※AERA 2013年2月25日号