「桜を見る会」の前夜祭費用を安倍前首相側が補填していた問題に捜査の手が迫る。退陣からここに至る流れを決定づけたのは2月に示されたある文書だった。AERA 2020年12月7日号から。
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「自民党総裁としての考え方は相当詳しく読売新聞に書いてありますから」
安倍晋三前首相は2017年の憲法記念日に、国内最大の販売部数を誇る読売新聞に自らの憲法改正に関する意見を独占インタビューという形式で掲載させ、国会でこう言い放った。あれから3年。今度はその読売新聞に、自らの政治家としての進退に関わる大スクープをすっぱ抜かれることになったのだ。
「桜を見る会」の前日に都内ホテルで開催された「前夜祭」の費用を安倍前首相側が一部負担した疑いがあり、公職選挙法違反、政治資金規正法違反の可能性があることは、かねて本誌を含むメディアが報じていた。11月23日、読売新聞朝刊が報じたのは、この「前夜祭」疑惑について、東京地検特捜部が安倍前首相の関係先を捜査しているというものだった。
追い打ちをかけたのは同日夜のNHKのニュースだった。前首相側が補填した金額は800万円以上と報じ、それを示す領収書の存在もにおわせた。この具体的な数字が言及されたことで、疑惑が一気に再燃した。
■ホテル回答で事態一変
今更ではあるが、2月17日の衆院予算委員会での安倍前首相の答弁を振り返ってみる。
「ホテル側からの見積書等の発行はなかったということであります」
「価格以上のサービスが提供されたというわけでは決してなく、ホテル側において、当該価格設定通りのサービスが提供されたものと承知しております」
「集金した全ての現金をその場でホテル側に渡すという形で参加者からホテル側への支払いがなされたものとしておりまして、安倍事務所には一切収支は発生していないということでございます」
「明細書につきましては、ホテル側が営業秘密にもかかわることであり、お示しをすることはできない、とこう述べているということでございます」
そして、立憲民主党・辻元清美議員の「それが事実と違ったらきちんと責任をとられるということですね」という質問に対して、こう明言した。
「私がここで総理大臣として答弁していることについては、全ての責任が伴うわけであります。そういう観点から答弁をさせていただいているということでございます」