新聞を開いたら、キャラクターが一面丸ごと使って現れる―――。そんな強烈な広告は久々だった。
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社会現象化した大人気漫画、「鬼滅の刃(きめつのやいば)」の最終巻となる23巻発売でのプロモーションの話だ。
朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、毎日新聞、産経新聞の全国紙5紙で、23巻発売前日の12月3日夕刊と、当日の4日朝刊の見開きを「鬼滅の刃」のキャラクターが飾ったのだ。
「鬼滅の刃」は、週刊少年ジャンプで連載され、大ヒットした漫画作品だ。2019年4月から9月にかけて深夜枠で放送されたTVアニメも人気を博し、20年には社会現象化。今年10月16日に公開されたアニメメーション「劇場版『鬼滅の刃』 無限列車編」は、公開から52日間で興行収入が288億円を超え、日本歴代1位の「千と千尋の神隠し」(308億円)に迫ろうとしている。
原作漫画の売り上げも好調だ。アニメが放送されるまで、シリーズ累計約350万部だった単行本の発行部数は、2020年10月には累計1億部を突破。最終巻となる23巻が発売されると、累計発行部数は1億2000万部に到達した。
さらに最終巻発売に合わせ、冒頭のような派手な新聞広告戦略が展開された。
新聞によって別のキャラクターが出ていることもTwitter上で話題になった。作中の主要登場人物で言えば、我妻善逸(あがつま・ぜんいつ)が朝日、主人公の竈門炭治郎(かまど・たんじろう)が読売、「炎柱」として劇場版で話題を集めた煉獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう)が日経、「水柱」の冨岡義勇(とみおか・ぎゆう)が毎日、嘴平伊之助(はしびら・いのすけ)が産経といった形だ。
人気の女性キャラクターも登場した(産経を除く)。朝日が炭治郎の妹・禰豆子(ねずこ)、読売が栗花落カナヲ(つゆり・かなを)、日経が甘露寺蜜璃(かんろじ・みつり)、毎日が胡蝶しのぶ(こちょう・しのぶ)。いずれも同じ紙面を飾った男性キャラと、作中で対になることが多いキャラクターだ。
このあたりの顔ぶれはアニメにもよく登場しており、馴染みのある人も多いだろう。だが、各紙に登場したキャラクターは3人ずつで、3人目はアニメだけの視聴層にはわかりづらかったかもしれない。
3人目はいずれも「柱」と呼ばれるキャラクターで、主人公が所属する、鬼を倒す組織「鬼殺隊」で最も位が高い剣士たちだ。アニメでも登場はしているが、劇場版が終了した時点では、炭治郎たちとまだ深い関わりを持っていない。
原作を読了していないと、3人目のキャラクターの名前が出てこない人も少なくないようで、Twitter上では「知らないキャラクター」と表現する人も散見された。
なぜ、集英社は、アニメ視聴層には馴染みの薄いキャラクターも全面で載せたのか。
これは、この新聞広告のターゲットが、社会現象化を牽引したアニメファンというより、きちんと原作漫画を読み進めてきている読者を対象としているからではないだろうか。
今回の新聞広告の狙いについて、「鬼滅の刃」の見開き広告を担当するPR会社・プラチナムの担当者はこう説明する。
「コミックスの完結記念と、累計部数1億冊突破について読者に感謝の念を述べさせる趣旨で広告を出させていただきました。より多くの方々に、コミックスを手に取っていただければ幸いです」