大学生では食事や交通費などを節約しているという回答や、「ふさぎ込むことが増えた」といった回答が目立ち、経済的にも精神的にも追い詰められている様子がうかがえる。

 日本学生支援機構の調査によると、一般の大学生の収入は年間200万円。うち、親からの仕送りは6割を占めるが、あしなが育英会から奨学金を受ける一人暮らしの大学生の7割以上が親から仕送りを受けていない。以前から過酷なアルバイトに従事する学生が多かったが、アンケートでは回答者の半数が1月に比べてバイト代が「減った」「なくなった」と回答した。

「ホテルのフロントで週2回、夜10時から翌朝8時までの深夜勤務をしていました。でも、体調を崩して1月に辞めてしまい、以来、次が見つかりません」

 そう話すのは、あしなが奨学生で佐賀大学3年生の石王丸貴士(いしおうまるたかし)さんだ。高校2年生の時に父を病気で亡くした。母は市役所の非常勤職員で年収は160万円。大学の授業料全額免除を受け、月7万円の奨学金(4万円は貸与、3万円は給付)と、8万円ほどのバイト代でやりくりしてきた。この春、妹が私立大に進学。母は将来の返済負担を心配し、妹に奨学金を借りさせなかった。石王丸さんは「母や妹を支えなくては」という思いでバイトを再開しようとした。一時は退学し就職することも考え、精神的に落ち込んだが、就活に向けて気持ちを立て直した。

「面接用のウェブカメラもわずかな貯金で買いました。卒業すればすぐに月々1万5千円の奨学金返済も始まる。返還して後輩遺児に利用してもらうためにも、なんとかして就職したい」

(編集部・石臥薫子)

AERA 2020年12月14日号より抜粋