鴻上尚史さん(撮影/写真部・小山幸佑)
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写真は本文とは関係ありません(※イメージ写真/iStock)作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします! 夫婦、家族、職場、学校、恋愛、友人、親戚、社会人サークル、孤独……。皆さまのお悩みをぜひ、ご投稿ください(https://publications.asahi.com/kokami/)。採用された方には、本連載にて鴻上尚史氏が心底真剣に、そしてポジティブにおこたえします
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「毒親」が亡くなったとき、娘は看取って涙を流すべきかと懊悩する43歳女性。その呪縛に怯えて暮らしたくないと吐露する相談者に、鴻上尚史がまず分析した、「親を大切に」という世間のイメージとは。

【相談89】毒親、毒兄の呪縛から未だに解放された感じがしません(43歳 女性 ゆず)

 私は小学校から中学校まで、酷いいじめに遭っていました。それは自殺も考えるほどの酷いいじめでした。

 それは表面上は解決したかのように見えますが、私は未だに忘れていません。

 そのいじめに遭っていた時、両親からは「学校へ行かないお前が悪い」「お前が全て悪い」と刷り込まれ、一時そうなのかも知れないと思うこともしばしばでした。

 そして兄はというと、我が身可愛さで、同じ中学校なのに、私を助けるどころか全て知らん顔をし、何かというと私から小遣いをまきあげていました。

 そして、私の就職についても、親は「お前に会社勤めができるわけがない」と決めつけましたが、結婚するまで7年、正社員の仕事を勤めあげ、さらにそこからは、超難関といわれる国家試験を突破し、今もその仕事をしています。

 その超難関試験の勉強をしている間も、「お前ごときが受かるわけがない」と鼻で笑いました。その時の親の小ばかにしたような顔を私は未だに忘れていません。

 ところがその試験に受かると手のひらを返し、「お寿司を取ろう!」「お赤飯を炊こう!」と、途端に私の機嫌を取りはじめ、その仕事に就いてからも、両親は私にお金を無心するようになってきました(全て断っていますし、今は両親から逃げるように引っ越し、引っ越し先の住所も新しい電話番号も、子供が生まれたことも、何もかも知らせていません)。

 その時の兄は、私が受かると思っていなかったのでしょう、苦虫を噛み潰したような顔をし、「チッ」と舌打ちをしてその場を去っていきました。

 要は、両親や兄は、私のことを1ミリも愛していない毒親、毒兄だということです。

 そんな両親や兄も、もういい年齢です。いずれはお迎えの時がきます。

 そんな両親を、看取ってやらなければならないのでしょうか?

 日本の法律には、両親を看取らなければならないという法律はありません。葬式を出す義務も発生しません。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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