トモダチ作戦で宮城県を訪れた米兵。感謝で見送られたが、訴訟社会の米国で思わぬ展開をみせている (c)朝日新聞社 @@写禁
トモダチ作戦で宮城県を訪れた米兵。感謝で見送られたが、訴訟社会の米国で思わぬ展開をみせている (c)朝日新聞社 @@写禁

 トモダチ作戦で被災地支援に当たった結果、白血病になった──。アメリカの法廷で、こんな応酬が繰り広げられそうだ。

 東日本大震災直後、宮城沖に急派された、米海軍の原子力空母ロナルド・レーガン。その乗組員だった8人(23~38歳)と子ども1人(作戦当時は胎児)が、東京電力福島第一原発から出た放射性物質で心身をむしばまれたとして、昨年末、カリフォルニア州の連邦地裁に損害賠償など総額2億2千万ドル(約202億円)を求めて提訴した。

 この訴訟で注目すべきは、訴えの内容もさることながら、米国の裁判の特徴だ。

 一つは陪審制度。裁判官ではなく、一般市民から選ばれる陪審員たちが、被告の責任の有無や損害賠償額などを決定する。

 彼らにとって東電は外国企業。その過失によって健康を害されたとする「同胞」の訴えは、米国内の企業を相手取った場合とは違う影響を、陪審の判断に及ぼすかもしれない。

 さらに「クラスアクション」と呼ばれる、日本にない集団訴訟の制度もある。本人の同意がなくとも、利害の共通する人々を原告に含め、賠償金などを勝ち得た際に分配するものだ。

 作戦当時、空母ロナルド・レーガンには約5500人の米兵が搭乗していた。作戦全体には米兵約2万4千人が参加したとされる。今後、原告たちが彼らを加えてクラスアクションに変更すれば、請求額は莫大になる。東電にとって脅威となり得るだけに、原告側がクラスアクションをちらつかせたり、東電の姿勢が揺らいだりといった攻防も予想される。実際、原告側のポール・ガーナー弁護士は、エクソン・モービルなど米国の大企業を相手に多額の損害賠償金を勝ち得た経験があるとしたうえで、こうも話す。

「東電にとっても誰にとっても、東電が早い段階でお金を出すことが最善の選択のはずです。やろうと思えば、我々はクラスアクションだってできるんです」

AERA 2013年3月11日号