日銀は「満額回答」。財務省は「賛否両論」。関係者の話をまとめると、日銀の新しい総裁と副総裁2人の人事案に対する評価は、そうなる。3月19日で退く白川方明(まさあき)総裁らの次となる人たちだ。安倍内閣が2月28日、国会に提示した。

 総裁には、財務省で財務官を経験した黒田東彦(はるひこ)アジア開発銀行総裁(68)を、副総裁には、安倍首相のブレーンである岩田規久男・学習院大学教授(70)と、日銀の生え抜きである中曽(なかそ)宏・日銀理事(59)を充てる案だ。

 日銀が「満額回答」と考えた理由のひとつは、「日銀批判の急先鋒だった岩田氏を取り込んだこと。行内で『国債を買うのにも限界があります』などと現実を見せつけてがんじがらめにすれば、従来の手法もやむなしと『変節』してくれるかも」(日銀OB)

 中曽氏の起用も「満額回答」に含まれるそうだ。「中曽さんは金融システムの安定を重く見ます。今回の急激な株高など資産バブルを嫌うので、金融緩和のペースを落とそうとすることも考えられます」(同)

 一方で、財務省は「賛否両論」だ。「賛」は、15年ぶりにOBが日銀総裁ポストを射止めたことや、黒田氏とは違った意味でインフレを願う人たちがいること。財務省OBによると、「金利は1回跳ね上がったほうがいい。財政が危ないとびっくりしてくれれば、増税も、社会保障の切り詰めもしやすくなる」と、「ショック療法」を求めているのだとか。

「否」は、黒田氏が次官の経験者でもなく、財務省の「本流」、主計局の出身でもないことだという。経済官庁の幹部によれば、財務省の「悲願」は武藤氏だったという。黒田氏ではまとまらず、最終的には武藤氏で決まると考えていたそうだ。

週刊朝日 2013年3月15日号

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