ほんで、コンテストになったら、まさかのことも起こる。まず、ウソみたいに口が渇く。なんぼ水を飲んでても、舌が引っかかたりして止まるんよ。

「見取り図」もしゃべくりやけど、リリーの方が噛んでたもんね。これまでもネタは見てきたけど、やっぱり、決勝の漫才は緊張してたと思う。それだけ、あそこは特別なもんやし、すさまじい場なんですよ。

■見ている間はコロナのコの字も出てこない

 …あと、正直な話、今年はみんな本番でボロボロになるんちゃうかと心配してました。というのは、今年は調整というか“トレーニング”ができてない。

 コロナで劇場は閉まってる。イベントもできない。夏以降、劇場が開いたといっても、当初はアクリル板を置いて漫才して、お客さんも1割ちょっとしか入れてない。

 漫才は、お客さんの前でやってナンボ。そういう実際に人を前にしてのトレーニング量で言ったら、例年の10分の1もやれてないと思う。

 オレもね、今は仕事の99%は講演会なんですけど、今年は3月以降、全てなくなりました。自分で言うのもナニやけど、オレの講演は1時間以上、しゃべりっぱなしの笑わせっぱなし。一番多い時で年間300回以上はやってたけど、ここ最近のペースで言うと、だいたい年100回くらい。それが全部キャンセルになりました。

 中には「普段の2割の観客数でやれませんか?」と打診をいただくこともあるんですよ。ただ、2割しかお客さんが入ってない中で、客席がスカスカの状態で、お笑いをやるのは難しい。オレはそうお答えしてきました。満席と2割では、それだけで完全に別物になるから。

 今年はそんな年やったんやけど、結果的に「M-1」を見たら、みんなあれだけのものを作ってきた。仕上げてきた。

 決勝にキャリアがある人が多く選ばれていたというのも、必然やと思う。もともと力のある人らが仕事もけいこもできない中、地力で上がってきたわけやから。ただ、キャリアがある言うても、あれだけのものを作るのはホンマにすごいと思います。

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今年はこれまでで一番「M-1」をすごい番組やと思った