家族であっても片付けの基準は異なり、互いの領地争いに発展することもある。自分と相手のエリアを分けることで平和的な解決をはかりたい。AERA 2020年12月28日-2021年1月4日合併号で、片付けのプロが具体的な方法を伝授する。
【収納王子コジマジック 小島弘章さんのすっきり片付いたキッチンの棚はこちら】
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埼玉県に住む女性(41)はコロナ禍で自宅で過ごす時間が増えたのを機に“断捨離”を決行。自身の洋服、めったに使わない食器や鍋、古い毛布などを処分するなかで、夫のものが気になりはじめた。とくに邪魔に思えたのが、数年前に夫が買って来て以来使っているのをほとんど見たことがないぶら下がり棒だった。
夫に「捨てていい?」と聞くと「まだ使うから」と答えるものの、一向に使う様子はない。かさばるし、見栄えも悪い。周辺の掃除がしづらく、ほこりもたまる。ある日、夫に黙って粗大ごみに出してしまった。「使ってないし、平気だろう」という軽い気持ちだったが、捨てられたことを知った夫は不機嫌に。「家族であっても人のものを勝手に捨てるのはよくない」と抗議され、女性も反省したという。
「収納王子コジマジック」としても活躍する一般社団法人日本収納検定協会代表理事の小島弘章さんは言う。
「家のなかのものは基本的に、『家族の共有物』と『個人の所有物』で構成されている。僕もよく、『夫がものを捨ててくれない』などの相談を受けますが、夫婦間であっても勝手にものを捨てるのはトラブルの元です」
「断捨離」の提唱者、やましたひでこさんは、家族間の片付け問題には、単なるものの処分以上の意味があると語る。
「自分以外の家族のものが邪魔に見えるのは、ものをため込んだり散らかしたりすることで『ここは私の縄張り』と主張する代理戦争をしているから。ものを捨てられた相手は、『侵略された』と感じ、家族の関係もこじれてしまう。『相手のものを減らす』『ものを捨てさせる』ことを求めるのはやめて、自分がその縄張り争いから撤退するしかありません」
平和的な解決のためには、エリア分けが有効だ。リビングなどの共有スペースも、「窓際の棚は自分、反対の棚は相手のスペース」「ダイニングテーブルの右側は自分、左側は相手のスペース」などと決める。「ここから先にははみ出してこないで!」ではなく、あくまでも「このスペースを守ってね」と友好的に交渉するのがポイントだ。
小島さんの自宅では、楽しみながらこのエリア分けを実行している。
たとえばシューズラック。小島家では、長男(7)がグリーン、長女(4)が濃いピンク、妻が薄いピンク、小島さんはブルーと、家族それぞれのパーソナルカラーが決まっている。そこで、それぞれのパーソナルカラーでエリア分けし、それぞれのスペースを決めた。
「『自分のゾーンはここ』と決まると子どもは『自分の陣地』を守ろうとするみたいで、シューズラックを開けて、自分の靴を戻すということが自然とできるようになりました」(小島さん)
(編集部・高橋有紀、小長光哲郎)
※AERA 2020年12月28日号-2021年1月4日合併号より抜粋