ただ、来夏までに感染が収束せず直前で中止に追い込まれるような事態となれば、判断が遅れて傷口を広げた「Go To」キャンペーンの二の舞いとなりかねない。五輪強行は菅首相の政治生命をかけた「大バクチ」となりそうだ。
菅首相の自民党総裁任期は21年9月末まで。10月21日には衆院議員の任期満了も迎える。選挙イヤーを生き抜くための駆け引きはもう始まっている。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は言う。
「菅首相が支持率を盛り返すのはたとえ五輪が開催されても容易ではなく、解散時期を延ばせばますます不利な状況に追い込まれる。今、自民党内では安倍晋三前首相・麻生太郎財務相と菅首相・二階俊博党幹事長の間で水面下の対立があります。このまま支持率が下がって菅首相で選挙は戦えないとなれば、双方の対立は表面化するでしょう」
1月18日召集を軸に調整が進められる通常国会で第3次補正予算が成立すれば、解散の機会が訪れる。だが、感染拡大が収まらなければ、解散権も行使できないと前出の鈴木氏は言う。その時に始まるのは、菅首相の“終活”だ。
「解散を打てないままズルズルと秋の衆院任期まで追い込まれ、選挙に勝つ見込みもないとなれば菅首相は続投を諦めてキングメーカーとして影響力を残す方向にシフトする可能性がある。二階幹事長とともに、『ポスト菅』に麻生派内で総裁選に出馬させてもらえない河野太郎行政改革担当相をあえて担ぐ可能性もある。一方、それを阻止するために、岸田文雄前政調会長や下村博文政調会長などが次の首相に意欲を見せるでしょう。21年の政局は大荒れです」
綱渡りの政権運営の先に笑うのは誰か。(本誌・西岡千史/今西憲之)
※週刊朝日 2021年1月1‐8日合併号