都市部と地方の施設では、グレードは同程度でも費用にはかなり差があります。
首都圏のホーム(A)は費用が高くなりますが、施設の数が多い分、特色のあるホームも多く、幅広い選択肢から選べる点はメリットです。ホーム選びで何を重視するかは人によって異なりますが、首都圏なら希望に合う施設が見つかる可能性も高いでしょう。
一方、地方のホーム(B)はコストが安くすみますが、面会に行く際の交通費がかさむ点には注意したいところです。また、都市部に比べると選択肢が狭いので、ある程度妥協を強いられることも多くなります。
一度ホームに入居すれば、誰もいない自宅に帰る必要はありません。
でしたら、予算さえ許せば、入居する本人よりも面会や手続きをする家族の都合を優先してよいと考えることもできます。しかし齋藤さんは、「本人の意思を確認し、可能なかぎり尊重するほうが後悔のない選択につながりやすい」とアドバイスします。
「首都圏と地方では窓から見える景色も、周囲の職員や入居者が話す言葉やコミュニケーションの仕方も違います。お年寄りにとっては生まれ育った地域を離れる喪失感は大きく、意欲が低下したり介護度が重くなる『トランスファーショック』という症状が出たりする人も。地元に残るか、面会の頻度か、どちらを優先したいかをよく話し合いましょう」
(文・森田悦子)
※週刊朝日ムック「高齢者ホーム2021」より抜粋