1990年代に放送が開始され、今も当時のファンから根強い人気を誇る「美少女戦士セーラームーン」。最新作は劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」だ。作品の持つ“普遍性“のために、読者が大人になって読み返しても『発見がある』という。AERA 2021年1月11日号に掲載された記事で、当作の魅力を再考した。
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90年代に子どもとして視聴した世代はいまや20代、30代。成長したファンたちは、作品の魅力を発信する側にもなっている。
かつて、こんなことがあった。「美少女戦士セーラームーン」は連載開始から20周年の2012年に再始動したのだが、連載スタート時からの担当編集者である講談社の小佐野文雄さんによると、再始動のリードアイテムになったのが、作中に登場したコンパクトをモチーフにした化粧品だという。変身アイテムであるコンパクトを本物の化粧品のコンパクトとして商品化したところ、異例の売り上げがあり、再始動にはずみをつけてくれたそうだ。
「現場で活躍したのは連載・放送当時に作品を読んで、観て育ったファンの人たちです。彼女たちが力を貸してくれるようになったのは強みですね。気持ちの入り方が違います」(同)
新作映画の宣伝担当、東映の宣伝プロデューサーの女性(36)と宣伝部の女性(27)も、子どものとき美少女戦士セーラームーンに夢中になった。宣伝プロデューサーの女性は言う。
「大人になってから観てみると、『こんなに深いテーマを描いていたんだ』と気づく点も多いんです。かつてはセーラー戦士たちに共感していましたが、年をとって敵役の気持ちがわかるようになったり、一つの正義を描いているだけじゃない、多様な見方ができるのが魅力ですね」
■なりたい自分になる
宣伝部の女性も言う。
「『美少女戦士セーラームーン』のテーマの一つは『自分らしくいること』だと思っています。セーラー戦士たちもそれぞれ悩みやコンプレックスがあり、苦い経験をすることもあって、そこが物語に深みを与えています。誰かになるんじゃなく、なりたい自分になればいいというメッセージが多くのファンを励ますんじゃないでしょうか」