自宅勤務が続くと「着膨れて化粧のしかたも忘れて」しまうと呟く遠藤玲奈さん。化粧品はアイメイク系だけ売り上げが伸びたそうだよ。「働き方着ぶくれ改革年を越す」ひよこ豆さんの、着ぶくれ改革という言葉も皮肉だ。リモートワークという現実が押し寄せ、否応(いやおう)なくその波に流されていく……。

★眉根寄せ慣れぬリモート冬の蠅(おぐら徳)

 自分の顔をこんなに繁々眺めつつ会議するとは思わなかった。画面の中で眉根を寄せる己の顔がついつい気になる。画面を這(は)う冬の蠅(はえ)を目で追うみたいに、我が貧相な顔を見詰めてしまう。

★小春日やZoomランチの気恥ずかし(朝月沙都子)

 いやいや、これも慣れの問題。Zoomランチも結構楽しいものだわ、ホホホと笑っているのか。はたまた、何度やっても気恥ずかしくて楽しめない、トホホなのか。

★友宅は豪邸Zoom越しに薔薇(かま

 会う時にはいつも気兼ねなくお喋(しゃべ)りする仲なのに、Zoomで繋(つな)がってみると、友のお宅はスゴイ豪邸。薔薇(ばら)がさりげなく飾ってある壺(つぼ)はいかにもお高そう。急に、我が家の土壁の背景が気になってきたりもする。Zoom越しの悲哀……。

★息子らの挙式また延びリンゴ剥く(姫川ひすい)

「また」の一語に溜息(ためいき)が聞こえる。リンゴを剥(む)きつつ、籍だけ入れて一緒に暮らし始めた息子たちを思っているか。

「婚礼を待つ娘美し冬温し」と我が娘を眩(まぶ)しく見つめる山川腎茶さん。「妻がいて共に眺める冬銀河」と詠んだ野中泰風さんは新婚らしい。二人でホホホと見上げる冬銀河。幸あれと祈りたい。

 かと思えば、「ステイホーム夫別寝間や冬温し」という和泉葵さん。季語「冬温し」の選択が曲者だ。これは、ステイホームによる家庭内別居なのか? いやいや、夫婦別間で仲が良い的な……ホホホなのか? 疑問ばかりが膨らむ。

(寄稿)

週刊朝日  2021年1月15日号より抜粋