2月12日、オバマ大統領の一般教書演説の直後、一人の若手議員が返答演説を行った。共和党がこの大役に抜擢したのは、上院議員1期目のマルコ・ルビオ氏(41)。“共和党のバラク・オバマ”と言われ、次期大統領選の有力候補とまで囁かれる。
ハンサムで若々しい容貌は、平均年齢の高い共和党では飛びぬけて若い。何より異彩を放つのはキューバ系米国人、ヒスパニックということだ。白人主体の共和党でヒスパニック系の議員は少数派だ。
共和党がアメリカンドリームの具現者のようなルビオ氏を担ぎ出した背景には、ヒスパニック票が大統領選の勝敗を左右するという現実がある。昨年のオバマ再選にはヒスパニック系の支持が大きく寄与した。米国が白人主体の国でなくなりつつある今日、共和党が再び政権を奪取するには、金持ち白人の政党というイメージを払拭し、ヒスパニック系を含む非白人層の支持が不可欠だ。
しかし実際は富裕層への増税反対、銃規制への消極性、移民制度改革法案への厳しい態度などで、中流層や非白人層からの支持は先細る。何とかしてこれらの層を引きつけるために、労働階級出身で“レーガン以来“と言われる演説能力を持つルビオ氏を前面に立て、イメージチェンジを図る戦略らしい。
だが、米国最大のヒスパニック系市民団体、ラ・ラサ全米評議会のクラリーサ・マーチネス氏は、ヒスパニック系市民はルビオ氏に投票しないだろうと予想する。ヒスパニック層は候補者への人種的なこだわりが薄く、政策ベースで支持・不支持を決める。共和党の中でも保守派に属し、移民制度改革法案にも全面的に賛成していないルビオ氏に無条件で票を投じることはない、という。
※AERA 2013年3月25日号