貧富の格差がかねてより問題視されている中国。その差は拡大しているといい、さらに純粋な所得の差だけでなく、戸籍による格差も大きいという。丹羽宇一郎・元中国大使と、新進気鋭の中国研究者・阿古智子氏、北京大を卒業し現代中国政治を専門にする任哲(にん てつ)氏が対談した。
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丹羽:(中国の)格差を是正しようとすると、戸籍制度に手をつけなければならない。本人の努力にかかわりなく、生まれた場所による戸籍を死ぬまで変えないという、農村戸籍と都市戸籍の区別は、明らかに現在の格差の最も大きな原因だと思います。
阿古:中国の格差の大きさは、日本では想像できないほどです。実質的な所得の差だけでなく、生まれながらにして決まる格差が戸籍問題です。自分の親が農村戸籍なら自分もそれを受け継ぐということです。大学入試でも、北京、上海、広州など大学の多い都市部では、地元の戸籍を持つ子どもたちを中心に採る体制になっている。農村戸籍の人がそうした都市部の大学を受験しても、都市戸籍の人とは合格点数も入試問題自体も違います。
任:北京大学の新入生の中で、農村戸籍の人は数年前から2割を切っていると思います。私が吉林省から北京大学に入った1997年は、少なくとも4割ぐらいの同級生は農村戸籍でした。それでも、吉林省の農村地域から北京大学に入るには、とても苦労しました。
阿古 今、大都市にある大学では農村出身の人はクラスに1人いるかいないかじゃないでしょうか。
任:昔は農村出身でも秀才であれば大学に入れました。戸籍に関係なく大学受験は平等だったのです。しかし今は学費が値上がりし、秀才でも家にお金がないと大学に行けないのです。
※AERA 2013年4月1日号