竹増貞信/2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
竹増貞信/2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
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原材料調達や商品の発注にもAIを活用しています
原材料調達や商品の発注にもAIを活用しています

「コンビニ百里の道をゆく」は、51歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

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 日本政府は2030年度までに、食品ロスを00年度比で半減の490万トンまで抑える目標を掲げています。コンビニ業界も、フードロス削減に取り組んでいます。各社様々な工夫を凝らすなかで、ローソンでは、人工知能(AI)も駆使して改善を図っています。

 その一つが、以前連載でもお話しした、AIが商品需要を予測する「セミオート発注」です。おにぎりやベーカリー、総菜などは販売許容期限が短く、どうしても廃棄につながりやすい傾向にあります。かつては、販売実績や地域の特性、加盟店さんの経験などをもとに商品を発注していましたが、15年からAIによるお客様の購買特性や気温、天候などの需要予測も加えて、発注の判断をしやすくしています。

 さらに昨年末にはおにぎりなど中食商品の原材料調達までもAIが予測できる仕組みを導入。商品発売後の動きを見て、商品終売日までの原材料の在庫をAIで予測し、仕入れ誤差が3割改善しました。適切な量を生産できることで、ベンダー工場でのロス削減にもつながっています。今後はこの3割をいかに詰めていくかが問われています。

 需要予測が得意なAIですが、まだまだ完全ではありません。廃棄は店利益の損失になるため、AIの提案があっても、思い切った発注ができないという声もあります。売れ残りと売り損じのバランスはとても難しい問題です。

 商品を売り切る工夫も必要です。ローソンでは、以前からレジでの値引
きボタンや値引きシールを用意。昨年には、スマートフォンで値引きをお知らせするという実験も行いました。

 食品ロスだけではなく、お客様の機会ロスの両方を防ぐために、AIを駆使して経験とデータを積み上げ、チャレンジを続けていきたいと考えています。

竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長