久々に映画館で見たのは韓国の「新感染半島 ファイナル・ステージ」だった。新種のウイルス感染で人間が人間を食う世界を描く社会派ゾンビ映画。前作の「新感染 ファイナル・エクスプレス」から4年後の公開、映画の中も前作の4年後を描くものだ。前作は、セウォル号で高校生たちを見殺しにした社会、命を軽視し情報を隠蔽する政治への批判が込められていた。パンデミックがリアルになった今観たい映画の筆頭だったが、さすがの韓流、期待を裏切らないものだった。

 原題は「半島」。韓国は周囲を北朝鮮で大陸と遮断され、海に囲まれた島国でもある。そして世界はこの島国の「半島」の問題を半世紀以上放置してきた。空と海で世界とつながるしかない韓国の現実に、隣国である日本がいちはやく見捨てるシーンは、あまりに現実とシンクロするものだった。それにしても興味深いのは、未来を紡ぐために闘う登場人物が、女性、子ども、老人だったことだ。パンデミックの今、閉ざされた社会のなかでの希望は、多様性を尊重し、ホモソーシャルを脱却するためのフェミニズムが希望。そのような答えを韓国社会は持っているように私には見えた。
    
 男性が圧倒的多数の政党で、男性ばかりで会食し、男性ばかりでいろいろ決める日本社会が明らかにコロナ対策で失敗している。コロナ禍とジェンダー、関係ないという人はいるが、命と尊厳を守り、ミソジニーやホモソーシャルを乗り越え、女性や子ども、高齢者が安心して生きられるためのフェミニズムが今こそ日本に必要なのではないか。罰金の金額を考える時間があるのならば、政府への信頼が失われているこの緊急事態状況を変えてほしい。政府からの緊急事態宣言が全く人々に響かない現実に、きちんと目を向けてほしい。

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

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