米連邦議会議事堂での就任式で、聖書に手を置き宣誓し、第46代大統領に就任したバイデン氏/20日、ワシントン(写真:Saul Loeb - Pool/gettyimages)
米連邦議会議事堂での就任式で、聖書に手を置き宣誓し、第46代大統領に就任したバイデン氏/20日、ワシントン(写真:Saul Loeb - Pool/gettyimages)
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 厳戒態勢のワシントンで行われた、バイデン大統領の就任式。その演説では何が語られたのか。AERA 2021年2月1日号で、ライターで翻訳家でもある、原賀真紀子・東京工業大学非常勤講師がその内容を分析した。

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 バイデン氏の演説スタイルは、洗練された文学的表現を多用したオバマ氏や、覚えやすいスローガン(America First/Make America Great Again)を独特な手ぶりを交えて連呼したトランプ氏と比べると、際立った個性や華やかさに欠ける。選挙中も、Average Joe(どこにでもいそうな普通の人を指す米語)と揶揄(やゆ)されることも多かった。だが、国民に一つになること(unity)を強く呼びかけた大統領就任演説の落ち着いた語り口からは、年の功がにじみ出ていた。分断の危機に瀕(ひん)した米国のみならず、世界中に安心を与えたのではないか。

「互いを尊重し(We can treat each other with dignity and respect.)」、「いがみ合うのはやめ、冷静さを取り戻して一丸となろう(We can join forces, stop the shouting and lower the temperature.)」など、伝わりやすい言葉が並んだ。次の言葉には、国内の亀裂が容易には解消されないことへの認識と、それに立ち向かう覚悟が窺(うかが)えた。

「これからは私の話をちゃんと聞いて、私という人間を評価してほしい。それでもまだ反対するというなら、構わない。それが民主主義であり、アメリカらしさだ(Hear me out as we move forward. Take a measure of me and my heart. If you still disagree, so be it. That’s democracy. That’s America.)」

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