俳優であり演出家でもある河原雅彦氏は「フェイスブック」にどうにも馴染めないでいるという。

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 今まさに食べようとしている料理の写真をアップしたり、楽しげな旅先の写真をアップしたり、街で見かけた犬や自慢のペットの写真をアップしたり、仲睦まじい家族写真をアップしたり、自撮りに成功したらしい己の写真をアップしたり、読んでるこっちとしては、「どーでもいいわ!」としか言いようがない記事がまっこと多い。

 食用のコオロギが大皿に盛られている記事なら分かる。旅先の北極でシロクマと戦っている記事なら分かる。あり得ない勢いで交尾をしていたり、あり得ない体勢で糞を垂れたりしている犬猫の記事なら分かる。手に手をとった家族が笑顔で滝に打たれている記事なら分かる。(そんなの余裕で削除されるだろうが)至近距離で己の局部を自撮りした記事なら分かる。なんでなんの変哲も無いテメーの日常をイチイチ報告されねばならんのだ。ギャラか? ノーギャラだったら、なに書いてもいいのか?

 ネット上のあれやこれやの自己表現など、薄っぺらいことは百も承知なわけだけど、人の目に触れる以上書き手は受け手側の人間に対して少なからず責任を持つべきじゃないかしら?

 主観の垂れ流しだけじゃなく、「これ、人が読んで楽しめるかな?」的な客観が入ってしかるべきだと思うのな。安易な自己発信を何の躊躇も無くやってのけられるその図々しさに、張本勲級の「喝っ!」をくらわせたい。

週刊朝日 2013年4月12日号