沖縄県民の反対を無視して建設が進む辺野古沖の新基地を、米軍と自衛隊が共用する。極秘合意を白日の下にさらしたスクープの筆者が、アエラに寄稿した。AERA 2021年2月8日号の記事を紹介する。
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沖縄を呪縛し続ける辺野古新基地の計画は、水面下で根本的に変質していた。四半世紀の間ずっと、沖縄県民が聞かされてきたのはこんな三段論法だった。
(1)米海兵隊の普天間飛行場は日本の安全保障に不可欠
(2)だが宜野湾市のど真ん中にあって危険すぎる
(3)だから人口が少ない名護市に新基地を造って移す──。
近年、計画推進の中心人物となってきた菅義偉首相は官房長官時代から宜野湾市民の命を人質に取り、「危険性の除去が原点」「唯一の選択肢」と、計画の受け入れを迫ってきた。
ところが。新基地は海兵隊だけでなく自衛隊も使うことが判明した。陸上自衛隊の離島専門部隊「水陸機動団」を常駐させる極秘合意を、在日米海兵隊のニコルソン司令官と岩田清文陸幕長(いずれも当時)が2015年に結んでいた。
沖縄タイムスと共同通信の合同取材に、複数の陸自幹部が本音を漏らしている。
「将来、辺野古は実質的に陸自の基地になる」
話が違うのではないか。沖縄県の玉城デニー知事は報道が出た1月25日朝、即座に批判した。
「われわれは実質的な負担軽減を求めている。海兵隊が引いていく代わりに自衛隊が入ってきて、という前提は県民感情からしても認められない」
海兵隊が引いていく、というのは中国のミサイル能力強化を受けてのことだ。危険が増す南西諸島からグアムやハワイへ、実戦部隊の大半を移転することが日米間で決まり、現地で受け入れ準備が進む。
沖縄県はこの変化を捉え、軍事戦略上も普天間代替の新基地は沖縄に必要ないと主張してきた。いずれ陸自専用基地になるという証言は、その正しさを裏付ける。論理的に、普天間は無条件で返還できることになる。
冷戦の余韻が残る1996年の日米特別行動委員会(SACO)合意以来、戦略環境が大きく変わる中でも、新基地建設は両政府の既定方針としてかたくなに維持されてきた。玉城知事は「SACOを再点検する」と矛盾を追及する構えだ。