インターネットを活用することが当たり前になった現代。情報はめまぐるしく速いスピードで駆け抜け、トレンドは急上昇してあっという間に消えていく。真実か偽りか、真逆の意見が飛び交うネット情報の真偽は、もはや個人の判断に委ねられている……。
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2010年代前半、マンボウにまつわる様々な死因の噂が都市伝説化し、インターネット上で流行ったのを覚えているだろうか? 現代では「あれは単なるネタだった」と認識する人が増えたものの、未だにマンボウは最弱生物と信じている人が大多数を占めている。実際、マンボウより弱い生物はたくさんいるが、大衆のイメージを変えることは簡単ではない。
「マンボウ=最弱生物」のイメージの定着に、2020年9月30日でサービス終了となった「NAVERまとめ」が一役買っていたことはあまり知られていない。前回のコラム<ニュース映像から発見された釧路に出現していた巨大ウシマンボウ>とは大きく内容が変わるが、今回はマンボウの都市伝説の真相に迫る話を一つしよう。なお、このコラムでいうマンボウとはMola molaを指すものではなく、マンボウ類総称のことである。
■2010年代のマンボウに対するイメージの急激な変化
個人的な話をすれば、私がマンボウの研究を始めた2007年には、上記のようなマンボウの死因にまつわる様々な噂は、まだインターネット上には存在しなかった。噂が流行る前のマンボウは「海ののんき者」と表現されることが多く、のんびりした優しいイメージが付いていた。ところがどっこい、噂が流行った後は、「死にやすい最弱生物」というイメージに一変し、現代ではそのイメージが定着してしまったのである。
これらの噂は、私がちょうど大学院でマンボウ研究を行っていた2007年~2015年の間に発生した。偶然にも、噂が流行る前と後を知る者となった私は、この噂がどのように発生し、都市伝説化したのか、その経緯を未来の人々に伝えるため、噂の出所と真偽性を調査し、現代民俗の1つとしてコラム末の参考論文にまとめた。
インターネット全体では調査対象が広いため、論文では情報が集まり注目されやすい電子掲示板「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」に焦点を当て、2001年~2014年のマンボウのスレッドの書き込みから死因の種類を抽出し、時系列順にどのように増えていったのかを調査した。その結果、2012年から2013年にかけて、掲示板に書き込まれたマンボウの死因の種類が急激に増えたことが明らかになった。調査を進めると、この急増の原因はNAVERまとめとTwitterであることがわかった。時系列的にはNAVERまとめのほうが先であり、今回はNAVERまとめの内容を詳しく取り上げる。