ゴルフ界の“ヒール”パトリック・リード(写真/gettyimages)
ゴルフ界の“ヒール”パトリック・リード(写真/gettyimages)

 プロレスで悪役のレスラーを「ヒール(Heel)」と呼ぶが、いつの間にかこのワードはプロレス以外でも普通に使われるようになった。プロレスにおける「ヒール」は、対峙する善玉や正統派、つまりベビーフェイス以上にスキルと演技力が求められると言われ、それだけに強いヒールがいるとそのプロレスは盛り上がる。つまり、なくてはならないキャラクターというわけだ。

 先述の通り、ヒールはプロレスを含めた格闘技界に多く存在するが、紳士のスポーツと言われるゴルフ界にも一人思い当たる男がいる……。

 現地時間1月31日に最終日を迎えたPGAツアー、ファーマーズ・インシュランス・オープンで、パトリック・リード(米)が優勝した。3日目に首位タイに立つと、最終日には4アンダー68をマークし通算14アンダー。後続に5打差をつける圧勝で、ツアー通算9勝目を挙げた。

 このリードこそ、近年のツアーにおけるゴルフ界における「ヒール」と言えるだろう。2013年以降、2017年を除いて毎年勝利し2018年にはマスターズでメジャー初制覇を達成。この間、ライダー・カップ、プレジデンツ・カップには米国代表として毎回出場し現在の世界ランクは10位につけている。これだけの実績があれば普通ならPGAツアーを代表するスター選手だろう。

 ところがリードの場合は、そうはなっていないのだ。今回の優勝もSNS上では「炎上」案件になった。問題となったのは3日目の10番ホール。フェアウェイバンカーからの2打目を左へ引っかけたリードの球は、カート道のさらに左に行き深いラフへ。近くにいたボランティアに球がバウンドしなかったことを確認すると、球が地面に埋まっているかも知れないとして、マークの上、球を拾い上げ、そこから競技委員の判断を仰ぎ、無罰での救済を受けた。

 リードはこのホールをパーセーブ。状況を鑑みれば、これ以上ない結果となったわけだ。ところがこの処置に難癖がつく。まず球が埋まっていたのか疑問という見解がアナリストから出ると、ボールをピックした後に競技委員を呼んだことにも意見が。さらに、同伴競技者やキャディ、ボランティアはリードの球がラフに落ちるシーンを見ていなかったとしていたが、映像では球が膝の高さくらいまでワンバウンドしていたことがはっきりと映し出されており、「バウンドした球が埋まるのか?」という声も多く噴出した。ツアーからはリードの処置は問題ないとお墨付きを与えられたが、どうもスッキリしない9勝目となったわけだ。

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