「MAISON CACAO(メゾン・カカオ)」創設者、石原紳伍。ここ数年で急速に人気が高まっているチョコレートが、石原紳伍の作る「MAISON CACAO」の生チョコレートだ。元ラガーマンで、トップ営業マン。甘い物とは縁遠かったが、コロンビアを旅行したときに出会ったカカオが、人生を変えた。今はコロンビア産にこだわる。クオリティはもちろん、カカオ作りが盛んになれば、コロンビアの治安も安定する。味だけではないこだわりが込められる。
【写真】コロンビアでの石原の心強いパートナーの一人、ワゴ・ロハス・ヒロシ氏と
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まずやってくるのは、みずみずしいマスカットの香りだ。ビターなカカオの風味に続いて舌につるり、ひんやりとした感覚が訪れ、なめらかに溶けていく。濃厚なのにフレッシュ。チョコレートなのに、まるで果物のようだ。さらに洋酒のような余韻が残る。一体、これはなに?
石原紳伍(いしはらしんご)(36)が2015年に創立したアロマ生チョコレートブランド「MAISON CACAO(メゾン・カカオ)」は、とにかく驚きに満ちている。冒頭のチョコレートは看板商品の「MAISON/マスカット」。小箱に詰められた直径1.5センチ角のキューブは、一見ごく普通の生チョコレートと変わらない。が、口に含むと想像を超える。
「山梨県の自社農園で収穫したシャインマスカットの果汁と、カリフォルニアのシャルドネワインをブレンドしてあります」
と、生みの親である石原は目を細めて、心から嬉しそうに笑う。
新作「HERO/グリーンレモン」の試作を見せてもらった。宮崎産グリーンレモンの皮をすりおろし、果汁を搾る。次にチョコレートの“素”であり、味の決め手となる自社製クーベルチュールを湯煎で溶かす。コロンビア産100%のカカオからできるこのクーベルチュールを、石原は現地で自ら40種類も作っている。香料など入れずともカカオ豆の発酵具合や配合の違いで、それぞれ口溶けも味も、香りが立ち上るタイミングも変わる。
40種のなかから最適なマッチングを選び、生クリームと果汁、レモンの皮を混ぜていく。通常の生チョコレートより1.5倍も多い水分をカカオの油分と分離しないように混ぜる技で、未体験の口溶けとジューシーさを編み出した。