イタリアで通信社を営みながら、最新作の『デカメロン2020』(方丈社)など、数々の著書を紡いできた内田洋子さん。作家・林真理子さんとの対談でイタリアのマスコミ事情も教えてくれました。
>>【前編/「ヴェネツィアは疫病の教科書」内田洋子、コロナ禍の“デカメロン”制作秘話】より続く
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林:内田さんはイタリアで通信社を経営されてるんですよね。
内田:ええ。私はトップ屋的な材料提供屋で、パパラッチも扱うフォトエージェンシーでもありました。スキャンダルのネタとか。
林:イタリアのパパラッチ?
内田:そうです。「パパラッチ」という昆虫がいるんです。フェデリコ・フェリーニ監督の「甘い生活」という映画に、ジャーナリストが出てきますよね。ローマの甘い生活、つまり芸能人たちに、いつもブンブンまとわりついているハエみたいなうるさい存在。それでフェリーニ監督がつけた名前が「パパラッチ」なんです。“ウザいやつら”という(笑)。
林:へぇ~。内田さんが日本のメディアに売った記事で、いちばん話題になったのはどんな記事ですか。
内田:これ載せたら怒られちゃうから……。(小声で)○○○と×××です。
林:ええっ!! 本当ですか!
内田:パパラッチって、自然発生的なことを特ダネでスッパ抜くという状況はほぼないです。少なくともイタリアでは、ほとんどがご本人たちからの持ち込みです。
林:ってことは、○○○と×××も持ち込みだったんだ!
内田:99%そうですね。イタリアの話ではないですが、ダイアナ元妃がパリのトンネルの中で衝突事故で亡くなりましたよね。あの前、「次はキスだ」というのがエージェントのあいだでの暗号で、(恋人の)ドディ・アルファイドさんとダイアナさんのキスが撮れるかどうかということですね。仲のいいパパラッチのところにダイアナさんから電話がかかってきて……。
林:えっ、ダイアナさんから!?
内田:ダイアナさんも「この人ならパパラッチされてもいい」というカテゴリーを持ってるんです。