「不正を考案し、指示するなどした首謀者については、違法行為を行った『正犯(実行犯)』として処罰の対象となるでしょう。それ以外に関与した人物については、不正行為へのかかわり方の程度によって、『共同正犯』や、もしくは不正をそそのかした『教唆犯』、不正を手助けした『幇助犯』とされる可能性があります」
教唆犯や幇助犯が成立するためには、基本的に「署名の偽造」という事実を認識している必要があるという。ということは、アルバイトをして給料をもらった人は、「不正だと知らなかった」と言えば罪には問われないのだろうか。一方で、口外しないという誓約書を書かされたとの報道もあるが、このような誓約書に同意した時点で「署名の偽造」を認識していたという判断になるのか。
「署名簿に他人の名前を記載する行為自体が不自然ですし、実際に作業をした際の状況によっては、『他人の名前を記載することについて、何らかの違法性を認識している可能性があった』と判断される可能性は十分あると思います」(同)
ただ一方で、仮に県警がアルバイトたちを地方自治法違反容疑で書類送検したとしても、必ず処罰されるというわけではないという。
「検察官は起訴するか否かについて幅広い裁量権を有しています。例えば、同様に民主政治の健全な発展を目的とする公職選挙法に違反したからといって、全ての人が処罰されるわけではない。起訴猶予になる人も相当数います。アルバイトをした人はお金をもらっているので、処罰の必要性が低いとまでは言えず、必ず起訴猶予になるとは断定できませんが、自分から警察に行くなどして事実を正直に伝えることは心証にも影響すると思いますので、まずは事案の解明に協力して欲しいと思います」(同)
民主主義の根幹を揺るがしかねない大問題だけに、捜査の進展が注目される。(AERAdot.編集部)