言葉が印刷されて、記憶を残していけるのが本。経典も書物で、仏の教えは最初に口伝、やがて書かれた経典で広く伝わり、今に至る。伝えるものを扱う仕事という意味で書店と寺は繋がります。徳正寺は、京都の今の場所に建てられて418年。人はわずか100年で生き死にを繰り返し、寺の器だけがあり続ける。その器を残すのが根を張ることじゃないかと。メリーゴーランド京都も、この先たとえ潤がいなくなってもお店が続いていくように。寺と本屋、子どもたちの将来に向けて居場所を残していきたいです。
妻:鈴木潤[48]
子どもの本専門店「メリーゴーランド京都」店長
すずき・じゅん◆1972年、三重県生まれ。四日市のメリーゴーランドで主に企画を担当し、2007年から京都店の店長。雑誌、ラジオ、テレビなどでの絵本の紹介、執筆や講演など多方面で活躍。著書に『絵本といっしょにまっすぐまっすぐ』『物語を売る小さな本屋の物語』。少林寺拳法弐段
私は「ご飯食べにおいで」とすぐに言うんです。食で人と結びつくのは多いかも。店で展示をお願いする作家さんも家に招きます。家族にも紹介できて、私がどんな思いで店をやっているかが伝わる気がします。何より楽しい。
迅(じん)くんとは最初から一緒にいるのが面白かったですね。迅くんが本にまとめようとしている子どもの詩。千篇選んでデータに打ち込んだと聞いて、まず仰天。大人の都合のいいイメージで塗られていない生の子どもの言葉に、私も衝撃を受けました。
子どもたちはこの先、学び方など自分で選べる選択肢が残されているのでしょうか。10年先でさえもわからない世の中で、大人として責任取れるもんは取っとこかと私は考えていて、本屋としては紙の本を読む選択肢を残せるように。それは相当な覚悟を持ってしないといけない。
私たち夫婦は違うけれど同じ方向を向いている。同じだけれど時々違う方向も向く。仕事も暮らしも地続きで、見えない根を共に育てています。
(構成・桝郷春美)
※AERA 2021年3月1日号