「遊廓」には、ひと夜の「遊び」のために、男たちが遊女を買いに外からやってくる。しかし、遊郭で働く者たちは、基本的に遊郭の外に自由に出ることは許されていない。遊郭の内側にいる者は、借金、貧困、人身売買、親の死去などを理由に遊郭に売られてきた人間、すなわち遊郭で働かざるを得ない人間なのだ。

 この遊郭では、「美しさ」と「華やかさ」が重視される。そして、その「美しさ」さえも、権力者や金持ちによって買われ、搾取される対象になるのだった。

■誰よりも「美しい」柱・宇髄天元

 音柱・宇髄天元は、鬼殺隊の中でも屈指の美しさを誇る隊士である。美を競う場・遊郭に潜入する人物として、宇髄ほどぴったりな者はいない。宇髄が変装して遊郭に潜り込んだ時には、美しい男女を見慣れているはずの遊郭の者たちが、宇髄を褒めたたえている。

「もんのすごい いい男だったらしいわよ」「遣手婆(やりてばばあ)がポッとなっちゃってさ」「あの男すごい色男だったけど」という、遊郭内の者たちのセリフから、宇髄の美しさが「特別」であること、そしてそれが遊廓の“捜査”に良い結果をもたらしたことがわかる。

鬼滅の刃』には美しいキャラクターが何人もいるが、とくに念入りに、相貌の美を説明されるのは、宇髄天元と胡蝶しのぶである。彼らの美に関する我妻善逸(あがつま・ぜんいつ)の語りを確認してみると、「めちゃくちゃ可愛いんだよ 顔だけで飯食っていけそう」というのが、胡蝶しのぶである。宇髄については、「オメーの面だよ 普通に男前じゃねえか」と、嫉妬たっぷりに語っている。

 他にも、前述の胡蝶や冨岡義勇(とみおか・ぎゆう)、甘露寺蜜璃(かんろじ・みつり)など美しい隊士がいるが、彼らがその「美しさ」を任務に直接的に活用しているシーンはない。しかし、宇髄は、自分の華やかな外見を「使って」、任務にあたっているところが異色である。

■元「忍」だった宇髄天元

 考えれば考えるほど、「遊廓編」のメインキャラクターは、宇髄天元以外にはあり得ない。「遊郭の鬼」は、突出した強さを持つ「柱」でないと対処不能であろうことが、予測されていた。つまり、「柱」が現場に向かうことは必然。

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「社会の闇に潜まざるを得なかった」者たち