「真貴子さんは毎回3次会まで残っていましたね。お酒の飲みっぷりもいいですし、当時から飲み会を断らないタイプでした。年次が上の女性官僚同士は非常に仲が良く、会以外でも個人的によく飲んでいたようです」

 毎年、総務省に入省するキャリア官僚のうち、女性の割合は1割程度。課や部に配属されれば、たいていは紅一点の存在になる。

「男性が多い職場でおじさんの相手もしなければならず、当時はセクハラのような発言も日常茶飯事でした。それに耐える者同士、分かり合える部分もありました」

 水野さんも入省1年目から、セクハラに悩まされた。

「夏に半袖ブラウスを着ていたら、50歳くらいのおじさん職員に『やっぱり若い子は肌のハリが違うねえ。ツヤツヤしてるよね』と言われて、これがここのスタンダードなんだと思ってがくぜんとしました。そんなおじさんたちにも愛想を良くしないといけない雰囲気があって、それが本当に嫌でした」

 だが、水野さんは「真貴子さんはそれを当たり前として受け入れてきた部分もあると思う」と振り返る。

 というのも、女性官僚の間では山田氏の若かりし頃の“逸話”が広まっていたからだ。

 ある時の女子会で、水野さんは先輩の女性官僚に「真貴子さんは何であんなにすごいんですかね」と尋ねた。するとその先輩は冗談交じりにこう答えたという。

「真貴子さんはね、若い時に民間事業者の中年男性とポッキーゲーム(ポッキーを両側から食べていく飲み会の余興)とかをちゃんとやっていたからだよ」

 これは有名な逸話だったため、その後も省内で何度か耳にしたという。だが、それを聞いた水野さんは「気持ち悪い」と嫌悪感を感じたと語る。

「そうまでして、おじさんと飲み会をやる価値はあるのだろうかと疑問でした。彼女は飲み会が好きだと思うし、半分は楽しんでいたのかもしれませんが、それを当然のこととして、キャリアを登らないでほしい。そういうことを受け入れてしまう官僚がいる限り、おじさまの接待文化はなくならないと思う」

次のページ
大臣へのアテンドでは異常な細かさ