鳥インフルエンザが発生した養鶏場で防疫作業をする徳島県職員=2021年2月9日 (c)朝日新聞社(徳島県提供)
鳥インフルエンザが発生した養鶏場で防疫作業をする徳島県職員=2021年2月9日 (c)朝日新聞社(徳島県提供)
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 病原性の高い鳥インフルエンザウイルス(H5N8亜型)の鳥からヒトへの感染が2月20日、報告された。世界保健機関(WHO)によると、この型でのヒトへの感染は世界で初めて。

【ひと目でわかる】こんなに?!人獣共通の感染症

 感染したのは、ロシア南部の養鶏場で働く7人。鳥インフルエンザが集団発生し、血液検査によって感染がわかった。今のところ全員が無症状で、ヒトからヒトへの感染は報告されていない。

 鳥インフルエンザを研究する京都産業大学生命科学部教授の高桑弘樹さんは「いくつかの型があり、過去にヒトへの感染が確認されたものもあります」。感染した野鳥やニワトリと濃厚接触し、ウイルスを多量に吸うと、ヒトでも感染する。

「H5N8亜型はロシアで初めてヒト感染が報告されましたが、広く検査を実施されていないだけであって、感染者はある程度いると思われます」

 一方、ヒトからヒトへの感染が見られないのは、ウイルスが新型コロナウイルスのように、ヒトの細胞で十分に増殖できないためだとされる。

 鳥インフルエンザウイルスは水鳥がもともと持つ。それが渡り鳥や野鳥へ、さらに養鶏場のニワトリへと感染。ニワトリ間で感染を繰り返して変異し、高病原性化する。

 高病原性は鳥に対するものだが、我々も安心できない。2004年に流行したH5N1型では、これまでにエジプトやインドネシアなどで862人が感染し、うち455人が死亡。死亡率はかなり高く、重症の肺炎を起こした例も報告された。09年の新型インフルエンザウイルスは、季節性のヒトインフルエンザウイルスと豚インフルエンザウイルス、鳥インフルエンザウイルスが豚の体内で混ざり合い、出現したとみられる。

 H5N8亜型はすでに国内でも見つかっている。コロナ禍での04年や新型インフルの再来か──。

「それはわかりません。鳥インフルエンザウイルスの感染が見つかれば、日本ではニワトリの殺処分や消毒などをして感染が広がらないようにしますが、世界にはそうした対応が十分にできない国もあります」(高桑さん)

 海外で感染と変異が繰り返されればという話だが、現状ではその心配はなさそうだ。

「野鳥のいるような場所に行った後は必ず手洗いをし、死んだ鳥は触らないこと。ただ、インコなど室内で飼う鳥が感染するリスクは低いので、安心してください」(同)

(本誌・山内リカ)

週刊朝日  2021年3月12日号

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