(写真/ソニー・ミュージックソリューションズ提供)
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 現在進行形のまま疾走を続けるロックアーティスト佐野元春がデビュー40周年を迎え、3月13日に東京・日本武道館、4月4日に大阪城ホールで記念のコンサートを開く。この節目に、長年、佐野の活動を見守ってきた音楽評論家の室矢憲治さんが、佐野を論じた。

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“今夜も愛を探して…”

 十代の青春の哀感を軽快なビートに乗せて歌い、80年代初め、日本のポップ・ロック・シーンに彗星のように登場した佐野元春。「同じ時代のフォークは言葉にもたれすぎ、ロックは身振りだけ。自分の魂を揺さぶる音楽は自分で作るしかない」と詩とメロディとビートの可能性を追求し、レコーディング、ライブ・パフォーマンスを重ねながら試行錯誤。“誰かの車が来るまで/闇にくるまっているだけ”と歌う「アンジェリーナ」(1980)は日本語の韻律を活かした洒落たユニークな詩とドライブ感あふれるビートが若者リスナーをとらえ、サード・アルバムの『サムデイ』でついにブレイク。

 10代のロック黄金期に吸収したビートルズ、ビーチボーイズ、ボブ・ディラン。豊富な音楽知識を持つ彼は“この気持ちわかってDJ/いかしたミュージック、もっと”と「悲しきレイディオ」(81)に“もっと!”=MOTOと自分を鼓舞するように隠しメッセージ。たちまち信号はフラッシュ、NHKでラジオDJ番組、さらには雑誌「THIS」を創刊して自分の興味、関心をファンに発信。「ガラスのジェネレーション」の“つまらない大人にはなりたくない”は、80年代のきらびやかな都市の通りで、新しいアイデンティティを探す若者たちの合言葉になったのだった。

 しかし、人気沸騰の渦中で単身渡米。ニューヨークでラップ、ヒップホップ・アーティストと交流して発表したアルバム「VISITORS」(84)は実験的革新作と呼ばれるも賛否両論。続いて「CAFE BOHEMIA」(86)、「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」(89)の三部作をロンドンのUKミュージシャン、バンドのザ・ハートランドの仲間と完成させ、名実ともにトップ・ミュージシャンとなった。

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不満をつのらせた、あるイベント