たとえば、自民党の丸川議員や三原じゅん子参院議員も、タレント出身では保守色が強い議員と言えるだろう。だが、森下氏はこれらの議員とは少し異なるのではないか、と角谷氏は指摘する。

「(政治的な発言をしてこなかったので)森下さんは、自身の考えや思想がどうやって培われてきたのか見えづらい。急にネットやSNSで政治的な発言に触れると、強硬な意見に引きずられたり、流されてしまうことがあります。ネットでは意見がストレートに届くので、世論や大衆の中心はここにあるはずだ、と考えてしまいがちです。情報をいかに見極められるかが大事ですが、なかなかできることではない。ただ、森下さんは中立・左翼系の人たちにもフォローされている。いろいろな意見を聞く力があるのか、それともどの意見にも引きずられてしまうタイプなのか。今後、有権者はこのあたりを見極める必要があるでしょう」

 これだけSNSが浸透した今、タレント候補ならではの苦労もあるという。

「ネットでは過去の言動も全部チェックされます。本人は本気で政治について考えていても、ネットの履歴から『過去にはこんなことを言っていた』『本気度が伝わってこない』などと揚げ足を取られることもあります。党も本人も、これからはずっと発信には神経を使わなければならない。それでもうがった見方をする人はいます。この洗礼は、タレント候補の誰もが経験することです。それを乗り越えられるかどうかが、国政を担う資質を持っているかの試金石になるでしょう」(同)

 森下氏は「私からお話しできることはまだありません」とコメントしているが、はたして政治家としてのポテンシャルを秘めているのか。本人からの正式な「出馬表明」が待たれる。(取材・文=AERA dot.編集部・飯塚大和)