東京五輪開催の可否はさておき、出場が未定ながら、早くも活躍に期待がふくらむ選手がいる。まずはテニスの大坂なおみ(23)。2月の全豪オープンで2年ぶり2度目の優勝。元プロテニスプレーヤーの佐藤直子さんは五輪金メダルへ「死角が見当たらない」と話す。
「大坂選手の『セカンドサーブを攻める』というのが対戦相手の定石でしたが、全豪ではセカンドサーブが大きく成長し、スピンの利いた高く跳ねる球を打てていました」
ミス後のメンタルコントロールもスムーズになったと指摘。さらに東京五輪との相性の良さも期待感を抱かせる。
「大坂選手は暑さにも強く、東京の炎天下も苦にしないでしょう。さらに試合会場の有明テニスの森は、優勝経験のある全米、全豪と同じハードコート。金メダルに限りなく近いと思います」
五輪出場権は6月に発表される世界ランキング上位56選手に与えられる。現在2位につける大坂の選出はほぼ確実だ。
最近になって出場が現実味を帯びてきたのが競泳の池江璃花子(20)。2月の東京都オープンでは、50メートルバタフライで白血病からの復帰後、初優勝。ただ、五輪出場権を得るには各種目で派遣標準記録を突破するなどのハードルがあり、池江のタイムとはまだ開きがある。元競泳選手でスポーツライターの田坂友暁さんは「ここまで戻ってくるとは予想外」と驚きを隠さないが、個人種目での出場は難しいと見る。
「自由形、バタフライともに他に好選手がいますし、100メートルを泳ぎ切る体力面もまだ不安。池江選手は次のパリ五輪を目指す道の途中。期待をかけすぎるよりも、池江選手らしく自由に楽しく泳いでほしいと思います」
とはいえ、池江自身が大会後に「アスリートとして狙っているところはみんな一緒」と発言。東京五輪出場を目指す姿勢に含みを持たせた。
スポーツライターの折山淑美さんは“記念参加”のような形は本意ではないはずと分析する。
「世界と真っ向から戦える状態に戻らない限り個人種目には出たくないのでは。出るとすれば400メートルリレー。彼女にはチームの士気を押し上げるパワーがある。チームメンバーとして日本の力になるとなれば、出場は十分考えられます」
国民の期待を一身に背負う2人。東京の晴れ舞台での活躍が見られるか。(本誌・秦正理)
※週刊朝日 2021年3月26日号