丸川珠代男女共同参画相が選択的夫婦別姓に反対する文書に名を連ね、批判を浴びる。姓を選べることで幸せになる人は増えても、反対派にとって不利益はないはず。今こそ、一進一退を繰り返す議論を前進させる好機だ。AERA 2021年3月22日号の記事を紹介する。
【写真】国会で明確な答弁を避け続ける丸川珠代男女共同参画大臣
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「先生におかれましては、議会において同様の意見書(編集部注:選択的夫婦別姓制度の実現を求める意見書)が採択されることのないよう、格別のご高配を賜りたく、お願い申し上げます」
こんな文書が今年に入り、自民党籍を持つ42道府県議会の議長宛てに送られた。文書の差出人は自民党の国会議員50人。国会議員が名を連ねて反対を迫る文書は、「圧力」だとして大きな批判を浴びている。
■先進国では特異な制度
差出人の一人で、選択的夫婦別姓の導入に慎重な自民党有志の議員連盟「『絆』を紡ぐ会」共同代表の高市早苗衆院議員は9日、「国会議員は県議会議員に頭が上がらない。むしろ、お願いベースだ」と釈明。また、差出人には男女共同参画担当大臣に就いた丸川珠代参院議員の名もあり、ジェンダー平等を推進する閣僚として不適切ではとの疑問の声が噴出した。
選択的夫婦別姓とは、「夫婦が望む場合には、結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の姓を称することを認める制度」のことだ。
現在、民法では結婚後は夫婦どちらかの姓を名乗ることが定められている。法律上はどちらに改姓してもいいものの、実際には96%の夫婦が夫側の姓を名乗る。法務省によれば、夫婦同姓を法律で義務付けている国は先進国では日本だけで、世界的にも特異な規定だ。
改姓すると免許証の書き換えやクレジットカードの更新など膨大な手続きが必要になるだけでなく、旧姓のままで仕事がしにくかったり、仕事上は旧姓を使用できても海外でトラブルになったりする不利益が生じることがある。慣れ親しんだ姓を変えることで、アイデンティティーの揺らぎに悩む人も多い。