忙しいとつい抜いてしまいがちな朝食。しかし体が資本な人ほど、それを大切にしているようだ。
月組トップスターから女優へ──。2012年4月に宝塚歌劇団を退団した霧矢大夢(きりや ひろむ)さんは今、女優になって初めての舞台「マイ・フェア・レディ」に立っている。新しい人生を歩み始めた時、霧矢さんが決意したことが「朝ごはんをきちんと摂る」ことだった。
宝塚時代も朝ごはんを食べてはいた。舞台と稽古を繰り返すハードな生活は朝食抜きではとても務まらない。華やかなステージは体力があってこそ成り立つ。稽古は昼頃から夜10時、11時は当たり前。時には深夜0時を過ぎることも。朝しっかり食べないと、その後は食事を摂る時間もないのだ。公演期間中も、朝食を摂った後は休憩時間もほとんどなく、メイクの間に用意してきた一口大のおにぎりと、作ってもらったバナナジュースを口にする程度。朝ごはんは自然と腹持ちのいい米食をメインに一汁一菜程度となった。
「あんなにしんどい生活は二度とないから」
宝塚を卒業した先輩たちの慰めの言葉は退団してよく理解できた。確かに今は舞台だけに集中できる。時間的に余裕があり、肉体的にもずっと楽だ。
「宝塚時代とは違って、今はスケジュールに差がある。仕事が入っていない時でも規則正しい生活をしないとダメになっていく気がしたんです。だからこそ朝ごはん。生活習慣を整えようという意識がより強くなりました。この仕事は自分自身の気を引き締めることができるかどうかが問われると思うんです」
※AERA 2013年5月20日号