ソフトバンクが昨年10月に買収を決めた米携帯電話3位のスプリント・ネクステルに、突然の対抗買収案で横やりを入れた米衛星放送大手ディッシュ・ネットワーク。創業者のチャーリー・アーゲン会長が5月初旬、単独インタビューに応じた。

「私たちの提案はソフトバンク案を上回る。米企業のスプリントは米企業に買われた方がいいに決まっている」

 提示した買収総額は255億ドル(約2兆6千億円)で、ソフトバンクの201億ドル(約2兆1千億円)を上回る。

 日本では無名だが、米国では名の知れた「クセ者経営者」だ。1980年、ディッシュの前身となる衛星放送会社を創業。受信用アンテナの「無料配布キャンペーン」などを展開し、ライバルの大手ケーブルテレビ会社から契約者を奪った。

 全米に名前がとどろいたのは2001年。米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)傘下で衛星放送「ディレクTV」を展開していた企業をめぐり、メディア王のルパート・マードック氏と買収合戦を繰り広げ、競り勝った。勝負勘をビジネスにも生かして会社を急成長させ、株式時価総額160億ドル。昨年の売上高は143億ドルだ。

 だが、急成長ぶりと裏腹に、会社の評判はすこぶる悪い。米経済誌「ブルームバーグ・ビジネスウイーク」は新年にディッシュを特集し、「イヤな米企業1位」と論評。「会長が従業員に長時間・休日労働を強いている」「アーゲン氏は部下の助言に耳を傾けない」と紹介した。

 果敢な経営スタイルは、ライバルの孫正義氏と相通じる。インタビューで、アーゲン氏は「孫社長と私は、ビジネスのキャリアが非常に似ている。起業したのもほぼ同時期。たった一人で、会社をこれほどの規模に大きくしたことも同じ」と語った。

AERA 2013年5月27日号