円安・株高で日本経済は息を吹き返しつつあるようにみえる。3月期決算を並べてみると、こんなところにアベノミクスの恩恵が――。

 業績不振が続くシャープ。5月14日に発表した決算は2期連続の巨額赤字で、自己資本比率は6%まで低下。自力での社債償還もままならず、追加融資に応じる主力銀行から経営陣の刷新を迫られた。新社長に就くのは、本流ではない営業畑出身の高橋興三氏(現副社長)。記者会見では、「創業の精神以外はすべてを変える覚悟だ」と苦渋の表情を浮かべた。

 にもかかわらず、だ。この日のシャープの株価は531円と、年初来高値をつけた。翌日には反落したが、100円台をさまよっていた半年前から見れば大きな改善だ。買い支えたのは誰か。ヘッジファンドを中心とする海外投資家だ。

 2008年のリーマン・ショック以降、円高と成長期待の乏しさから日本株は長らく敬遠されてきた。だが、デフレ脱却を掲げた「アベノミクス」の到来で見方は一変。日本経済が上向くとの期待が「膨張」し、海外マネーが殺到しているのだ。

「為替が円安に反転し、潮目が変わると見た海外投資家が昨秋来、日本株を買い漁っている」

 企業価値検索サイト「ユーレット」を運営するメディネットグローバルの西野嘉之CEOはそう話す。投資先はシャープのような業績不振銘柄にも及んでいる。

 海外勢の急ピッチで大幅な買い越しにより、日経平均株価は半年で7割超も上昇。15日には約5年4カ月ぶりに1万5千円台にのせた。まさにアベノミクスが演出する「バブル相場」。だからこそ、個人投資家は注意が必要だ。海外勢は株価を引き上げたうえで、虎視眈々と利食い売りの機会を見計らっている。手を出した後に株価が急落し、高値づかみだったということになりかねないからだ。

AERA 2013年5月27日号